大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

仙台高等裁判所 昭和28年(う)69号 判決

(イ) しかしながら、原判決挙示の証拠を綜すれば、被告人の右四回の焼酎原料醪製造の行為は、例えば当初から単一の計画の下に(いわゆる一仕込みとして)企画したが作業の都合等で仕込作業を四回に分けて行つたとか、その他相互に何等かの関連があつたというのではなく、独立の仕込み行為を二日位おきに四回繰返したというに過ぎないものであることが明かである。然るに原判決はこれらの行為は法律上包括一罪を構成するものと解し、包括一罪の場合には、行為の回数を明かにすることは必要であるがその結果の如きは合計を示すを以て足るとの見解の下に、前記のような判示を行つたものと思われる。然し前述のような独立した焼酎醪製造の行為が、単に同じ場所で二日おき位に四回繰返してなされたというだけのことで之を包括一罪と解することは酒税法第六十条第六十六条の解釈として正当ではなく高松高等裁判所昭和二十五年(う)第一一二四号昭和二十七年二月二十九日宣告の判例(高等裁判所判例集第五巻二九六頁)は本件について必ずしも適切ではない。従つて、原判決は法律の解釈を誤り個々の行為の特定に必要な事実を十分に判示しなかつた理由不備の違法を犯したもので、原判決中判示第二の部分は破棄を免れない。

(ロ) 案ずるに、一個の裁判で数個の犯罪事実を認定し、之に対して数個の各別の主刑を言渡す場合に没収追徴等を言渡すには、その没収追徴がいずれの主刑に附加されたものであるか(いずれの主刑を言渡された事実に基いて言渡された没収追徴であるか)を判文上明かにしなければならないものと解すべきである。けだし、主刑を言渡した犯罪との関係を明かにすることを得ないならば、附加刑を言渡したことの当否は之を判定し得ないものであるから、判文上この点を明かにしないことは判決の理由を尽さないことになるからである。之を手続法の面から観ても、かく解すべき必要と実益がある。けだし右の場合各別の主刑を言渡された犯罪事実は各別に上訴申立の対象となり、従つて判決確定の時期執行の時期等をも異にすることがあり、これらの場合、その判決の上訴の対象となつた部分、確定した部分等の範囲を確定する上からも前記の措置は必要なことが首肯されるからである。然るに、原判決は原判示第一の焼酎無免許製造の罪と原判示第二の醪無免許製造の罪を認定し、前者に付被告人を罰金二万円に、後者に付被告人を罰金六万円に処した上、是等二つの犯罪にかかる器具及容器の換価金として六百二十五円を没収した。そして是等二つの犯罪にかかる器具及容器とは原判決が其理由の末尾に摘録した一斗入罐外十一個の罐、桶及蒸溜器を指すこと原判決の判文上認め得るところであるが、それの物件の内何れが原判示第一の犯罪にかかるものであり、いずれが同上第二の犯罪にかかるものであるか、又それの物件の換価代金は各何程であるかは全く判示されていない。その結果、前段説明の理由で原判決中判示第二の事実に関する部分を破棄するについて、その効力が、没収に関しては金何円の範囲に及ぶものか全く判定し得ないこととなつているのである。即ち原判決は理由不備の違法を犯したものであり、此点に於て全部破棄を免れない。

(後略)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!